キオクノアトサキ
Taika Yamani.
没話その3 「翼の恋愛タイプ分類」(番外編その4の1.5)
翼の家の、翼の部屋。また泊りに来た友人の陽奈と文月、そして妹の飛鳥。
四人パジャマ姿で、他愛もない話に興じている。
「陽奈は、試合終盤、このシュートを入れると勝つけど、はずすと負けるっていうような、そんな感じかな。こっちも必死になるし、敵のマークも厳しい」
「……どう、解釈すればいいの?」
陽奈は少し真剣に翼を見返した。翼はわざわざ解説はしないが、真剣勝負でなければ手が出せないタイプ、という極めて主観的な考えだ。もっとも、「案外陽奈は馬鹿な男に引っかかるかもしれないな」という、かなり失礼な考えも翼にはないではない。翼は陽奈が顔に似合わず結構したたかなことを知っているが、一見大人しそうな外見にまだ騙されているのかもしれない。
「陽奈は簡単には落ちないもんね〜」
「陽奈さんは文月さんとは違いますからね」
「飛鳥チン、もしかしてケンカ売ってる〜?」
「文月は、試合中盤、点を取られてもすぐ取り返せばいいやっていう感じ?」
「む! それどーゆーカンジよ!」
一度親しくなってしまえば下手に自分を飾らずに本音で気軽に付き合えるタイプ、とは、翼はあえて口には出さない。今度は陽奈が笑った。
「でも文月は、軽いくせに、理想高いよね。それにアレだし」
「ひーなーまーで〜! 軽いとかアレって何よぉ!」
暴れる文月と陽奈をよそに、飛鳥が、「ね、ね、わたしは?」と、わくわくした顔で翼を見た。
「飛鳥は……自分のゴール?」
翼は微妙に、妹から視線をそらせた。
「なんというか、おれがシュートしたら自殺点だろう、というような」
「バスケで自殺点なんてまずないじゃんっ」
文月は笑い、陽奈は何やら深読みしたような顔をし、飛鳥はよくわからないというな不満げな表情になる。
翼にとって飛鳥は守るべき対象であって、男のままであっても、恋愛の対象にはなりえない。だから翼には、飛鳥をその観点からタイプ分けすることが難しい。
翼は笑ってごまかすことにすると、さりげなーく、話題を変えた。
ちゃんちゃん
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初稿 2005/04/30
更新 2014/09/15