Boy's Emotion
Taika Yamani.
第二話
三 「恋心」
結果的に、穂積貴子により近付くことになったのは、男子生徒よりも女子生徒の方だった。一年の時からの友人の槙原護のように、以前と同様に接することができるものがいたら、男子も上手くいけば護以上の友達になれたかもしれないが、それは可能性のまま終わってしまった。
貴子が女子として学校に通うようになった初日、その一限の休み時間、護の恋人である松任谷千秋は、二人の友人とともにまたすぐに貴子の席にやってきた。
特に積極的だったのは宮村静香で、彼女は貴子のことをあれこれと聞きたがった。貴子は当り障りのない範囲で答えられることには普通に答えたが、ただでさえ少ない口数は以前以上に少なかったし、本人としては少しそっけなくしたつもりだった。入学当初など、同じようなペースで女子に応じてよく白けられていたから、その時と同じでなれなれしくしてくるものはすぐ減ると思っていた。
にもかかわらず、静香はそれを拒絶されていない証と受け取ったらしい。貴子にお構いなく、好奇心を満たし続けた。元の「貴之」と今の貴子では、見た目から受ける印象は大きく違っているし、変な下心がなくとも、異性に話しかけるのと同性に話しかけるのでは意味合いが違うことも多い。要するに「穂積さんはそんな子なのだ」と、静香はそのまま受け止めたらしい。
もう一人の藍川志穂の場合は、頭の隅にしっかりと貴子が元男ということが入っていたようで、最初から普通の女友達の関係など期待していないような部分があった。きっかけが千秋や静香の付き添いだったせいもあるのだろう、おそらく貴子に嫌われても構わないとまで思っていたようで、結構きつい発言をすることも多かった。それでも、貴子がマイペースを崩さなかったから、彼女も彼女なりに貴子を解釈したらしい。
大人しそうな見た目と裏腹に、貴子がそういう相手だと思えば、それなりの対応があるということなのだろうか。貴子を変に特別扱いをしない、そんなスタンスの静香たちに、まだ少し先の話だが、貴子も少しずつ、いつのまにか普通に話をするような友達として接していくことになる。
二限の休み時間には、貴子の左横の席の副学級委員の奥野杏那など、千秋たちと親しい他の女子たちも話に混ざってきた。
こうなってくると場は混沌としてくるが、まわりだけで勝手に騒ぐ部分も少なくなかった。貴子は頻繁に話しかけられたが、貴子が答えなくとも、または短く答えるだけで話が四方八方に飛び交い、貴子は適当に応じて後は聞き流すという手段を使った。
もっとも、「男から女になった気分ってどうなの?」などとあまり答えたくない質問をしてくる相手には、貴子は冷めた視線で応じたのだから、すぐにフォローに走ってくれる千秋がいなければ、強い反感を買ったり気まずい沈黙に陥ったりしたかもしれない。
「穂積さんが穂積くんだなんて信じられない」と何度も言われたが、「別に無理に信じてもらう必要はないよ」というのが、貴子の正直なところだ。面倒くさいから口には出さないが、どうでもいいような他人が信じようが信じまいどう思おうが、文字通りどうでもいい問題でしかない。なにより、そんな他人よりも、この時の貴子にとっての最大の関心は、その女子たちの中に混じっていない女子にあった。
貴子の片想いの女の子、同級生の脇坂ほのか。
ほのか他数名の女子は、一度も貴子に近付いて来なかった。
貴子が男から女になっても、どんなに見た目のいい女になっても、万人が貴子に興味を抱くというのは、ありえないし、自意識過剰すぎると貴子もわかっている。みなそれぞれ自分の生活を持っているから、貴子どころではない生徒や、貴子に興味を持たなかった生徒、多少の興味を持っても構う気にならない生徒などがいて当然だ。が、わかっていても、いったいほのかが自分のことをどう思っているのか、貴子には想像もつかず、彼女の存在を意識しまくっていた。
なお、いつのまにかクラスの外でも噂になっているようで、わざわざ他の学年やよそのクラスから覗きに来る生徒もいたが、そちらは近付いてこなかったから、貴子は黙殺して済ませた。覗きに来た上級生などは「おいおい、元男って、あの子かよ」などと、貴子を「あの子」呼ばわりしていたようだが、貴子の知ったことではない。もしも貴子が今の目立つような容姿ではなく地味な容姿だったら、その多くが貴子を気にもしなかっただろうことを思えば、相手にするのもばからしくなる。どうでもいいような他人に対しては、かなりそっけなく冷めている貴子だった。
三限の休み時間には、積極的な桜井雅樹を筆頭に、一部の男子生徒たちも多少話に混じってきた。
貴子が「愛想も人付き合いもよくない女子」だと徐々に浸透していったようで、最初の騒ぎも少し沈静化してきていたが、好奇心を抑えきれなかったらしい。
そんな男子たちは、なぜかかなりぎこちなかった。女子を通して間接的にしか貴子に話題をふれないのだから、態度の違いは露骨だった。女子に混ざっているから冗談めかせていたが、貴子を意識していることがありありとうかがえた。ほとんどの男子が、以前のように「穂積」と呼び捨てではなく「穂積さん」と呼び、どこか初対面のように接する辺りにも、彼らの心境が浮き出ていた。
ありがちな彼らの反応だが、このことが示す事実は小さくはなかった。クラス全体の方向として、貴子を「貴之」と同一人物として扱うよりは、「初対面のような女子」として扱うという流れを意味していた。
これは半分は、貴子の性格によってできた状況と言える。貴子の性格がもっと違っていれば、全く逆の流れ――貴子を初対面のような女子として扱うよりは、貴子を「貴之」と完全に同一人物として扱うような流れ――や、中途半端などっちつかずな態度が長く続くような流れもありえただろう。
実際、「貴之」と多少は話したりする関係だった男子生徒を中心に、「初対面の女子にしか見えないけど、でもあの子はあの穂積なんだぜ?」と思うものも多かった。が、「だったら元の穂積として扱えば?」と反論された時、それが実行できるものは少なかった。大半の男子生徒にとって、「だって元の穂積とは思えねーんだもん」というわけらしい。「元の穂積のことだって、よく知ってるわけじゃないし」という理由もあって、彼らは貴子をとりあえず初対面みたいな女子として扱うという、安直な道を選んだ。
もちろん、そんな生徒たちばかりではなく、貴子を「元の穂積」と同一人物としても扱えないが、だからといって初対面の女子としても扱えない、という生徒たちもいた。高杉満を含むクラスの過半の生徒――特に男子生徒――たちで、彼らは中途半端を脱しきれず、隔意のある態度をとった。高杉満などは、性格が基本的に歪んでいないから悪意は抱かなかったようだが、貴子もいちいち歩み寄る必要性を感じなかったから、この先、事務的な用件以外ろくに口を利かないまま時が流れることになる。
さらに別の一部は、貴子が「元の穂積」かどうかではなく、貴子が「元男」であるという点に拘った。他の学年の生徒を中心に、元の「貴之」を知らない生徒は数多い。彼らの大多数は、「元が男だったのかもしんないけど、今は女ってことでいいじゃん。病気なんだから仕方ないんだし」という、比較的この時代に多い考えだったようだが、そうは思わない人間もいたのだ。
「どんなに可愛く見えても“元男”」
「今は女でもしょせん“元男”。身体が女になったって“男”」
前者には「並の女になるならまだしも、あんなに可愛くなるなんて」という嫉妬も混じっているし、後者も後者で重い偏見の壁がある。人によっては、自分もいつ性別が変わってしまうかわからないという不安からきている無意識の反発もあって、ここまでくると人間の感情の多様さと複雑さとに根ざした問題にまで突き当たり、単純な解決策など存在しなかった。
しかも厄介なことに、逆に「身体が女なら完全な女」「元がどうであれ身体が女なんだから、心も女らしくなれ」などと考える者も世の中にはいる。「男は男らしく、女は女らしく」「女になったんだから女らしく」「男だったんだから男らしく」などという時代錯誤な考えは、貴子に言わせればどれもナンセンスでしかないが、どんなに啓蒙が進んでも、社会的歴史的に培われたジェンダー観からくるしがらみも大きく、偏見を持つものはいなくならない。
正面から高邁に押し潰すか、地道に対話を繰り返すか、卑屈に下手に出るか、もしくはあっさりと無視するか。貴子の性格からしてどれを選んだのかは言うまでもないが、この先、完全に無視しきれないことも少なくはなかった。
結局なんだかんだで、貴子を元の「貴之」と同一人物として扱ったのは、母親やその友人たちや祖父母など、ごく小数だけだったということになる。元から「貴之」に親しい人間がそれだけ少なかったとも言えるが、彼彼女たちを、貴子が好意的に評価したのは、貴子にしてみれば当然のことだった。
ちなみに、その中には、高校に入学してから知り合った友人の槙原護も含まれている。高校時代の友人が一生の友人に繋がることは珍しくはないだろうが、後になって振り返れば、この件でかえって、二人の関係は安定したと言えた。彼の恋人の松任谷千秋と仲良くなったから護との関係も安定した面もあるが、なんにせよ、この先も槙原護とは親しい友人として過ごしていくことになる。
初日の昼休み、貴子は図書室に行く前に、同じ三号館にある学食に向かったが、千秋たちもくっついてきて、結局四人で食事を取ることになった。
「あれ、千秋に志穂? 学食に来るなんて珍しいね」
途中で千秋たちが所属する女子ソフトボール部の面々が声をかけてきて、彼女たちが貴子に気付いてやいのやいの騒いだりする一幕もありつつ、二年二組の女子の四人、空いているテーブルで食事を取った。
私立樟栄高等学校の学食と購買は、巷でも評判のベーカリーと提携して、空間の半分はちょっとした喫茶店のような雰囲気になっている。晴れの日には外にもテーブルを展開して、オープンカフェのイメージも帯びる。
見た目や雰囲気にも気を遣っている、そんな学食に対する生徒たちの評判は上々だが、提供される商品に対する評価もかなり高い。そのベーカリーの経営者が樟栄高校の卒業生で、多少利益を度外視した提携方針が取られているらしく、格安で高品質な昼食が供給されているためだ。
PTAの中には、値段の安さや質の高さが過剰だと指摘する声もあるらしいが、学食や学校側の方針としては、その分、金銭ではなく、他の部分で学校や社会に貢献することを望んでいるという。貴子は多少押し付けがましさを感じなくもないが、全体的に見て、今のところそれは成功していると言えるのだろう。
まだ二十数年しか歴史を持たない若い学校だが、各方面で活躍するOBOGも多く、そのベーカリーの経営者のように、余裕のある卒業生は学校への援助を惜しんでいない。他の卒業生たちも学校に対する愛情を失わず、貴子の片想いの相手である脇坂ほのかのように、親子二代に渡る生徒も珍しくはない。家からは多少遠い私立のこの学校を、どちらかというと施設や学業面やリベラルな校風を考慮して選んだ貴子も、今となってはそれなりに愛着を持っていた。
そんな学食での貴子の態度は、男友達と一緒の時とほとんどかわっていなかったと言える。
かつては、槙原護やクラスメートたちが賑やかに昼食を取る横で、話をふられた時に短く受け答えするだけで、黙々とご飯を食べていた「男子生徒」。
今は、松任谷千秋やクラスメートたちが賑やかに昼食を取る横で、話をふられた時に短く受け答えするだけで、黙々とご飯を食べている「女子生徒」。
かつてと今との大きな違いは、男連中が「貴之」をさほどかまわなかったのに対して、新しくできた女友達が貴子に積極的に関与しようとしている点と、外野からも視線を妙に集めて、ただ座っているだけでもやたらと目立ってしまっていた点だろうか。貴子本人の気持ちはどうであれ、性別と見た目が変化したことで、貴子に対するまわりの印象は確実に変質していた。
そのせいでうんざりさせられることも少なくなかったが、それでも千秋たちを拒絶せず、貴子が彼女たちと一緒に昼食を取った最大の理由は、やはり打算だった。話が前後するが、この日の夜に槙原護からかかってきた電話の内容にも、その回答は含まれている。
『五組でも部活でも、おまえのことえらい騒ぎになってたぜ。女になった学校はどうよ?』
「……おまえみたいな奴ばっかりなら、楽だったんだけどな」
『女子トイレと女子更衣室は満喫したか?』
「訂正。おまえみたいなのが何人もいたらやってられないな」
『はは。いろいろ聞かれたし、おまえを紹介しろって言ってきた奴もいやがったぞ。やっぱ男とくっつく気ない?』
「あるわけないだろ」
『だよな。まあまだ初日だし、まずは慣れることからってことか。千秋からいろいろ聞いたぜ、今日は世話になったみたいだな?』
「……なに聞いたか知らないけど、世話になったのはこっちだよ。女――の立場になった以上、同性、の付き合いっていうのも、多少はあった方が都合がいいはずだから。気を遣ってもらって助かってる」
『あいつもおせっかいで世話焼きだからなー』
「ああ、松任谷さんって、槙原の彼女とは思えないくらい、気の利く子だよな」
『いい女だろ?』
「……のろけか?」
『まっ、おれが惚れた女だからな!』
照れもせずに言う護に、貴子はちょっと声に出して笑う。相手にはくすっと笑ったように聞こえたかもしれない。
「おまえには負けるよ」
今の貴子の自然な声は、男だった時の声とはあまりにも違いすぎて、口調はそっけなくとも繊細な少女の声音にしかならない。のだが、電話越しの護はいったいどう折り合いをつけているのか、内心はどう思っているにしろ、態度はほとんど変わっていない。以前と同じように他愛もない会話を交わした二人である。
ともあれ、基本的に打算的な理由で千秋たちと昼食を共にした貴子は、手早くご飯を食べて三人と別れて、途中お手洗いに立ち寄って真新しい歯ブラシセットで歯磨きをしてから、予定通り図書室に向かった。ちなみに、しっかりとジュースを奢ったあたり、なんだかんだで律儀な性格の貴子だった。
時事イベントや二、三ヶ月ごとに模様替えをする図書室は、まだ夏の雰囲気を引きずっている。
人目を黙殺しながら図書室に入った貴子は、顔見知りの図書委員と、何かの用で来ていた三年生女子の図書委員長さんたちにカウンターで挨拶をして、図書主任の司書先生――厳密には「司書教諭」ではなく「学校司書」だから先生ではないが、みなそう呼んでいる――と顔を合わせた。その図書委員たちとの対面は、やはり最初は相手がぎこちなかったが、貴子はここでもマイペースで動いて、挨拶を済ませるとすぐに事務的な会話に入った。
と言っても、大した話ではない。九月頭の図書委員会で選ばれた新図書委員長の話や、八日ごとにローテーションがまわってくる当番日を確認しただけだ。
「穂積くん――もう今は穂積さんですね、穂積さんが抜けた分は、広崎さんががんばってくれてましたよ」
ちょうど先週の土曜日が当番だったらしく、次の貴子の当番は来週の木曜日だった。それを確認した貴子に、おっとりした中年女性の司書先生は、ほがらかにそう告げた。
「今度ちゃんと、お礼を言っておいてくださいね」
「……ええ、そうします」
「貴之」に好意を寄せてくれて、一度は告白までしてきた、一年の時のクラスメートの広崎紗南。
もしもまだ紗南が「貴之」を想い続けているのなら、この時まで紗南のことをほとんど思いだしもしなかった貴子は、いくつもの意味で冷たいかもしれない。もちろん貴子に罪はないが、恋はこんな非情な一面も持っている。
貴子と紗南は図書委員の同じ班だから、次の当番日にはほぼ確実に会うことになる。貴子は司書先生たちとの話を終えると、広崎紗南との対面がどうなるのかちょっとだけ考えながら、昼休みの残りの時間を図書室で椅子に座って本を読んで過ごした。
ごくなんでもない行動のはずだが、本人の気持ちと関わりなく「大人しそうな可愛い女の子が、きれいな姿勢で椅子に座って本を広げている光景」が出来上がって、ここでも貴子は妙に視線を集めていた。が、本を広げていれば近付いてくるものはいない。蔵書が豊富な樟栄高校の図書室は、充分な広さがあって書架の近くにも椅子や机が用意されているが、図書室とは別に読書学習室も用意されている。そのせいもあって、図書室で小声で多少雑談をしていても怒られないから、ひそひそ話は飛んでいたようだが、貴子は例によって黙殺してすませた。
好きな女の子のことを意識しすぎて一日中緊張していたせいか、さすがに気疲れを感じていたが、まだ午後が残っているから、貴子はがんばって気持ちを立て直す。紗南のことはすぐに忘れて、自分の身体のことを考えたり、片想いの相手のことを考えたり、五限の体育の授業のことを考えたりしつつ、朝よりもちょっとだけ読書が進んだ。
予想外の広崎紗南との遭遇は、その図書室の帰り道だった。
「あ、あの、穂積くん!」
予鈴が鳴る前に図書室を出て、二階の連絡通路を歩いていた貴子を、聞き覚えのある声が呼び止めた。貴子は気付いていなかったが、図書室の視線の中には、紗南のものも含まれていたらしい。以前と同じような言葉で後ろから名前を呼ばれて、貴子は足を止めて、ゆっくり振り返った。
約二ヶ月ぶりだから、広崎紗南の姿はほとんど変わっていない。はずなのに違って見えるのは、貴子の方が変わってしまったからだろうか。以前はやや見おろすようにしていた身長の差が逆転していて、貴子の方が十センチ以上低い。いつもうつむきがちな紗南の顔が、今の貴子の高さからだとよく見えた。
貴子と目があって、一瞬だけ、紗南は瞳を揺らした。
だがすぐに、紗南は以前と同じような、控えめな笑顔を浮かべる。
「退院、おめでとう……。やっと学校、来れるようになったんだね……」
今の貴子と「貴之」との違いに、動揺やショックを感じていないのかどうか、少なくとも紗南はそれを露骨な態度にはしなかった。もしかしたら、図書室での司書先生との話を盗み聞きしていた可能性もあるが、どちらにせよ覚悟ができていたのだろうか。
「当番休んで悪かったね、穴埋めありがとう」
貴子が率直に礼を言うと、紗南はちょっと慌てたように首を横にふった。
「びょ、病気だったんだもん、しかたないよ。でも、ほんとに、よくなってよかった……」
「…………」
性転換病の場合、性別がかわってしまった状況を指して「よくなった」と表現していいのかどうか、判断が難しいところだ。貴子は言葉を重ねずに、小さく頷くにとどめた。
「えっと、あの……」
「貴之」がそんな態度だから、用件が済んでしまうと、「貴之」と紗南の会話はいつもすぐにそこで途切れてしまう。言葉を探す紗南に、貴子は以前と同じように、ちょっとそっけなく応じた。
「もう昼休みも終わるから、先に行くね」
「あ……!」
だがここから先は、紗南の反応がいつもと違っていた。いつもは黙って見送るところを、紗南は声を張り上げたのだ。
「あの!」
貴子を呼び止める声。
「穂積くんは……! 穂積くんは、穂積くんだよね……!?」
万感の想いが込められた、紗南の問いかけ。
と察するには、貴子はまだ人生経験が足りていなかった。今はまだ自分のことで手がいっぱいで、紗南の気持ちを考慮する余裕なんてない。
貴子は動かしかけた足を止め、短く、本音を答えた。
「ああ、おれはおれだよ。前も今も、何も変わってない」
繊細で澄んだ少女の声とは、やはりミスマッチをかもし出す言葉遣い。
貴子にしては、多少余計な言葉を付け加えていた。それを自覚したから、貴子はそのまますぐに歩き出そうとした。
「あ、ま、待って!」
が、紗南はそんな貴子を、また呼び止めた。
「……まだ何か用?」
そう応じると、貴子はスカートを揺らして数歩、通路の端に移動する。図書室から主校舎への連絡通路は、徐々に生徒が移動を始めていて、真ん中で話し込むと邪魔になる。実際、通りすがりにちらちら見ているものもいた。
「わ、わたし、ずっと、心配してたの……」
「…………」
男から女になってしまった「貴之」のことをなのか、それとも「貴之」と紗南とのこれからの関係のことをなのか。貴子はちょっとシニカルなことを考える。
と同時に、紗南の態度にはさすがに少し戸惑いも感じさせられてしまった。
まるで今の紗南の態度は、自惚れでなければ、今でも自分のことが好きだというふうに、貴子の目には見えてしまう。貴子もほのかを好きでいるのだから、似たようなものと言えなくもないが、自分の身体が変わってしまうのと、相手の身体が変わってしまうのは、意味が全然違う。
貴子から見たほのかは、以前と全く同じほのかだ。変わってしまったのは貴子の方であって、ほのかの方は姿形も内面も、貴子が知るほのかと何も変わっていない。だが紗南から見た貴子は、内面はともあれ、姿形はまったく違って見えるはずなのに。
「見た目だけで人を好きになるわけではない」と言えば聞こえはいいが、それ以前に、同一人物だと判断すること自体が困難なはずだった。仮に、そのハードルをクリアして同一人物だと思えたとしても、やはり恋愛の問題となるとまた話が別だと貴子には思える。紗南の内心が、貴子にはさっぱりわからない。
「穂積くんは、穂積くん、なんだよね……?」
「……何度言っても変わらないよ」
「ご、ごめん……」
「いいけど。まだ何か用?」
「あ、あの、その……。ほ、穂積くん、今でも……」
少しそっけなく話を促す貴子に、紗南は一瞬声を切り、思いつめたような顔をして、言葉を続けた。
「……脇坂さんのこと、好き、なの……?」
「…………」
なぜ広崎さんがそれを知っているのか。
貴子の脳裏にその疑問が湧き上がったが、それ以上に望みのないほのかへの想いを指摘された気がして、貴子の瞳に暗い影が落ちた。まるで紗南と一緒に自分も傷つけるような、「広崎さんには関係ないよ」という冷たい言葉が口に出かける。
貴子は、自制しようとしたが、しきれなかった。またそっけない言葉が口をこぼれた。
「それがどうかした?」
否定ではなく、肯定を含んだ、貴子の言葉。
紗南の顔が、くしゃっと、泣きそうに歪む。
だが紗南は、貴子の想像以上に強かった。
数秒の沈黙の後、紗南は顔を上げる。
「わ、わたし……、それでも、穂積くんが女子になっても……」
まっすぐな眼差しだった。
「今も、ずっと、穂積くんのことが好きなの……!」
「…………」
ある程度は想像の範囲ではあっても、さすがに衝撃的な、突然すぎる紗南の言葉。人通りもあるこの場所で、「貴之」の性別が変わって再会した直後の、この言葉。
二月の時と状況が違いすぎるせいか、貴子は胸の痛みを覚える余裕もない。
好きな男子が女子になってしまったという状況に、紗南がそれほど思いつめていたのだと、それを察するには、貴子はやはりまだ人生経験が足りていなかった。
もしも好きな相手がいなければ、貴子の心も少しはぐらついたかもしれない。
貴子の偏見かもしれないが、普通の同性愛の女の子は、元男の女よりも生粋の女の子と付き合いたがる傾向にあるように、貴子には思える。この先、貴子が女の同性愛に走るとしても、貴子が元男と知って、それでもいいと言ってくれる女の子は、もしかしたらもう現れないかもしれない。
特別な感情や興味を持てないだけで、押し付けがましさがなく控えめな紗南のことは、別に嫌いではない。しかも紗南は、男だった時から好きだと言ってくれていた。今はこんなにも変ってしまったのに、それでも好きでいてくれている、というのは、少しは感情を揺さぶられる。
が、逆に言えば、貴子の感情はそれを超えるものではなかった。
もしも貴子に好きな相手がいなければ、とりあえずお試し感覚のお付き合いから、という展開もありえたのかもしれないが、それは仮定の話でしかない。ほのかへの想いを抱いたまま、貴子は他の誰かと付き合う気はなかった。
「……ありがとう。でも、ごめん」
広崎さんと付き合う気はないよ。という強い言葉までは付け足さず、貴子はそれだけ言うと、さっと身を翻した。
「あっ……!」
紗南が声を出すが、もう貴子は振り返らない。
紗南との距離をこれ以上縮めるつもりはないという意思表示。紗南に対しても、貴子は無理に態度を変えるつもりはない。冷たいのかもしれないが、紗南とは付き合う気になれない以上、それが今の貴子なりの誠意だった。
昼休み明け、火曜日の五限、二年二組は体育の授業だった。
樟栄高校のプールは屋内型だから、泳ごうと思えばいつでも泳げるが、授業で水泳があるのは六月半ばから九月の半ばまでである。ちょうどシーズンが終わったばかりで、女子は体育館でのバレーボールだった。貴子は「もう少し早ければ脇坂さんの水着姿を近くでじっくり見れたのに」と、とても下心溢れることを思ったりしつつ、自分に告白してくれた女の子のことをいつのまにかあっさりと忘れて、一人で見学に回った。
ランニングと準備運動の後、授業の前半は基礎練習、後半は実戦が行なわれた。体育は男女別で二組合同だから、一組と二組の女子、今日からは貴子が加わって三十三人が、一チーム六人から七人で五つのチームを作る。二組は貴子が見学で、一組にも欠席者が一人いたから、七人チームは一つだけだった。コートが四面取れる広さのある体育館で、二つのコートを使って四チームが試合をし、残りの一チームは審判をする。
足元だけ真新しい体育館シューズに履き替えた制服姿の貴子は、まだスカートを少し気にしながら無造作にステージの端に腰をおろして、傍から客観的に見るとちょこんといった風情で座り込んで、その二つの試合を眺めていた。
この日は朝から蒸し蒸しした天気だったが、日中になってさらに気温が上がっていた。接近中の台風の影響で外は風が強いが、その南からの風も湿った生暖かさを含んでいる。体育館も冷暖房完備のはずなのだが、九月も半ば過ぎということで弱めなのか、大人しく座り込んでいるとかえってじんわりと汗ばむほどになっていた。
体操服に着替えている女子生徒たちは、授業前は冬の体操服を着込んでいる生徒もいたが、そんな気温だったからさすがに授業中に脱いだ生徒も多く、過半の生徒は上下とも夏の体操服姿だった。貴子の視線の先で、貴子の片想いの彼女も、健康的に白い手足をみなの前にさらしていた。
ラウンドネックの白い半袖体操服に、濃紺のハーフパンツ。足元は、清潔に白い短めの靴下と、ライトグリーンのラインの入った体育館シューズ。半袖の体操服は、左胸には黒いアルファベットで学校名が刻まれていて、首まわりと袖口は、体育館シューズと同様、学年性別を示す淡い緑色で縁取られている。脇坂ほのかは、彼女が部活など運動をする際の常で、長い黒髪を赤い髪止めゴムでポニーテールにして束ねていた。
「ほのかさん、今日はなんだかやけに張り切ってるわね」
「ほんと、暑いのに元気よね〜」
「あは、そうかな? ぼくはいつもこうだよ?」
一組と二組の混合チームに所属する脇坂ほのかは、同じチームの菊地愛梨たちとそんなことを笑って言い合いながら、百六十センチ近い身体をしなやかにいっぱいに使って、中にバネでも入っているかのように活躍していた。元気に声を出してメンバーと声をかけ合い、自身も汗を輝かせてきびきびと動く。メンバーの上手いプレイには笑顔で一緒に喜び、失敗しても明るく励まし、本人もたまにミスって悔しがったりする。
男だった時とは違う特等席でそれを見学することができた貴子は、歓びやら苦しみやら切なさやらが同時に存在するという、複雑に鬱屈した心境だった。ブラウスの中、下着の上に薄手のTシャツを着込んでいるのも悪かったのだろう。暑さで微かに汗ばむ身体に下着が張り付いて、その感触のせいで今の自分の女の身体を強く意識させられるのも、貴子の思考をかき乱していた。
今のところ、脇坂ほのかは貴子に近付いてきていない。貴子としては近付いてきて欲しいのか欲しくないのか、それすらも不明瞭だった。
正直、貴子は彼女に話しかけられたりしたら、自分がどう反応してしまうのか全く予想がつかない。ほのかが話しかけてくるとしたら、興味本位や好奇心めいた友達感覚でしかないとわかっているが、今彼女に近付いてこられたりしたら、貴子は焦って慌てて緊張しまくってしまうだろう。
そんな自分に情けなさを感じるが、自分自身がほのかに対してこの先どう接するのか、まだ全然決まった方針といったものがない。ほのかが近付いてこないなら、貴子の方から動かない限り何も変わりようがないのだろうが、一度ふられてしまっているし、自分の身体は大きく変化しているし、同性になってしまっているし、どう動けばいいのかさっぱりわからない。
自分の気持ちははっきりしているし、わかりきっているし、決まりきっている。
だが、今の貴子がその自分の気持ちをほのかにぶつけるということは、それはつまり「“元男の女”との恋愛」や「女の同性愛」を、彼女に求めるということでもある。それと同時に、貴子自身も「自分の身体が女としての、女の同性愛」を受け入れるということでもある。
前者は、受け入れるかどうかはほのかの問題だが、ほのかから近付いてきてくれない以上、実際に行動にだして求めるかどうかは貴子の問題だった。好かれたいが、それ以前に嫌われたくない貴子としては、仮に自分からほのかに近付いた時、ほのかがそんな自分をどう思うのか、考え出すと怖い。貴子の今の気持ちを知られることでかえって嫌悪される可能性もあるし、現時点で興味本位で声をかけてこないということは、すでにマイナスの感情をもたれている可能性もある。元々一度ふられているし、ほのかに再び気持ちをぶつける勇気なんて簡単には持てない。
後者は、まさに貴子自身が受け入れるかどうかの問題だった。仮にほのかが女の同性愛を許容するとしても、貴子自身が、女の身体で、女性との恋愛に走ることを、どう考えるのか。
精神的な面では、貴子にためらいはない。自分の身体が男であろうと女であろうと、とにかく何でもいいからほのかが欲しいと思う。彼女に好きになってもらって恋人同士になって、愛し合って一緒に幸せに生きていきたい。
問題は、肉体的な面。
身体の関係を全く無視して恋愛を考えることは難しい。少なくとも、小学生の頃ならまだしも、今の貴子にはできない。自分の身体が男から女になってしまったことで、かえって現実的な問題として、どうしても意識してしまう部分もある。
生々しい先走った想像だが、自分が女としてだれかと肉体関係を結ぶということをどう考えるか。
もちろん、今の貴子のそれを考慮したくなる相手は一人しかいない。
換言すると、今の女の身体で、女性であるほのかと肉体関係を持つことを、今の貴子はどう考えるのか。
すでに貴子は、今の自分の女の身体の快感や性欲を、まだまだ未熟だが、一人で確かめているし知っている。かなり倒錯的だが、今の自分の肉体で好きな女の子の身体を想像して自分に触れたことは、まだ女になって日が浅いのに一度や二度ではない。
だが、貴子はこれまで、女同士の性愛の形なんて真剣に考えたことがなかった。同性間での性愛はどこか不自然だという偏見もあるし、自分が当事者として想像するようになったのもつい最近だ。
好きな人のすべてが欲しいけれど、男だった時と全く同じ形を取ることはできない。元の男の身体で彼女を愛せない現実が、かなり辛く苦しい。だが、もうそれはどうしようもない。女の身体になった以上、別の愛し方をするしかない。
それをどう感じて、どう考えて、どう動くのか。
『……付き合える可能性すらないのに、そんなこと考えたって……』
時間をかければ、何かが変わるのだろうか。それとも、やはり自分から何か動くしかないのか。
ほのかへの気持ちを捨て去る、という選択肢は、今の貴子には存在しない。この気持ちは、自分のものなのに、自分でもどうしようもない。
貴子は、自分の心を覗き込みながら、元気に活躍するほのかを熱い眼差しで見つめ続けることしかできなかった。
それからの数日間は、貴子にとって長いとも短いとも言えない速さで流れた。
学校全体は、木曜日に行なわれる生徒会選挙に向けた選挙運動期間中で少し賑やかだったが、貴子が知らないうちに脇坂ほのかに恋人ができていた、というような気配もなく、ほのかが特に貴子に接触してくることもなく、貴子は少しずつ日常を取り戻していった。
もともと物珍しさはあっても、口数が少なくて簡単には人と打ち解けない貴子は、お世辞にも親しみやすいタイプとは言えない。初日の騒がしさは翌日には収束し、貴子が相変わらず本を広げてばかりいるせいもあって、気安く声をかけてくるクラスメートはすぐに減った。貴子とお近付きになりたいと思った生徒は少なくなかったようだし、きれいな姿勢で大人しく読書をする貴子の見た目に騙されて「守ってあげたくなるようなたたずまい」「やかましい他の女子どもとは大違いの慎ましい女の子」と受け取った生徒もいたようだが、基本的に男子は「見た目は可愛いけど、そっけなくて話しかけにくい子」「やっぱりあの穂積だと思うととっくみにくい」、女子も「もっと明るければまだ付き合いやすいんだろうけど」というような認識に落ち着いていったらしく、積極的に関わろうとはしなくなった。愛想の悪い貴子に「お高くとまっている」と感じて一方的に気を悪くした生徒や、「見た目と裏腹に可愛げがない」「しょせん元男ってことか」という感想を理不尽な失意や悪意を持って抱いたものもいたらしいが、幸い、松任谷千秋たちが気を遣ってくれたおかげか、いじめのような方向に発展することもない。
もちろん、不穏なこともなかったわけではなかった。特にクラスの外では、教室での貴子を知らないよそのクラスの生徒を中心に、うっとうしく思わされることがたびたびあった。初対面の男子が下心丸出しで近付いてくることもあったし、見知らぬ生徒が軽蔑に近い視線を向けてくることもあった。一度などトイレに入ったとたんに、「男だったくせに平気で女子トイレに入るなんてどんな神経してるんだろ」などと、これ見よがしに話し始める女子もいた。
彼女たちにしてみれば、貴子が「元男の女」であれ「女になった男」であれ、どちらにせよ同性とは認められないということなのだろうか。貴子としてはそんな彼女たちの心理はわかりやすく、むしろ一緒にトイレに行こうする宮村静香などの心理の方が理解できなかったが、悪意は少数でも気に障りやすく、わずらわしいことにはかわりがない。全体的に好意――好奇というべきか――的な視線の方が多かったが、平穏を取り戻すには程遠かった。
身体の問題も、徐々に徐々に慣れつつはあったが、まだまだ簡単に鬱屈した心理になってしまうことを止められない。
それでも、時々自傷行為に走りたくなったりと色々な問題を抱えつつも、貴子は少しずつ少しずつ、ゆっくりとであっても確実に、以前通りの生活を取り戻りつつあると言ってよかった。休んでいた授業に追いつくための勉強で余計な時間を取られたりしていたが、学校では好きな女の子を意識しながらも、授業や読書にもちゃんと集中できるようになっていた。
そんな貴子の動向とは無関係に、学校の行事は予定通りに消化されていく。
秋分の日の前日の木曜日、六限と木曜日のみの七限――ほぼ隔週で行われる二時間のロングホームルームの時間――を使って、生徒会役員選挙が行なわれた。
会長に一名、副会長と書記にそれぞれ男女各一名ずつ、生徒会三役と呼ばれるその五人の他に、会計と会計監査、執行委員などを選び、かつ各種委員会の新委員長の承認を行なう選挙で、選ばれた面々は、十月から新生徒会として活動を始めることになる。
脇坂ほのかの姉が生徒会長に擁立されたという三年前は、ポロシャツ通学の問題が取りざたされていたらしいが――その成果で、やっと来年から制服のバリエーションの一つとしてポロシャツが加わるという話があり、三年生は大げさに嘆いているらしい――、今年は特に大きな争点はなく、生徒会長と女子の副会長などは立候補者が一人の信任投票だけという選挙だった。
男子の副会長戦は、イケメンと評判で女子に人気のある二年六組の沖田直哉と、現会計監査を務めている秀才タイプの優等生、二年一組の向井大輝との一騎打ちの戦いで、一部かなり盛り上がったりしていたが、貴子にとってはそのあたりはどうでもいいことでしかない。
生徒会長には、前評判どおり、楽々と過半数票を獲得して、脇坂ほのかが選ばれた。
投票前の候補者演説をする彼女は、どこか近寄り難いほどに凜としてきれいで、貴子はそんなほのかの姿に見惚れ、予定通り彼女に投票したが、応援しかできない自分に歯がゆく情けない思いもした。
結局、性別が変わっても、見た目や声が変わっても、名前が変わっても、「貴之」の本質的な部分は何も変わっていないということなのだろう。
好きだと思っているのに、深い関係になりたいと思っているのに、何もできていない。一度ふられているからといって、同性になってしまったからといって、ただ遠くから見ているだけ。今を一歩ずつ真面目に生きてはいるものの、それだけで、それを好意的に捉えてくれる人もいるようだが、肝心の脇坂ほのかに好かれるための努力を何かしているわけでもない。なのにきっぱリと吹っ切るでもなく、前向きにがんばるわけでもなく、諦めきれずに、うじうじしている。
もしもこのまま何事もなく時が流れれば、貴子はそのまま卒業して、脇坂ほのかのことは、やはり良くも悪くも思い出になっていったのかもしれない。
だが、貴子が何もできずにいるうちに、ここでまた、急激に状況が動くことになる。
九月二十六日、月曜日。
脇坂ほのかが、貴子が思いもよらなかったような形で、彼女の方から貴子に接触してきたのだ。
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初稿 2008/02/26
更新 2008/02/29