夢の続き
Taika Yamani.
第四話 「現実」
「さて、希ちゃんの推測を聞かせてもらいましょうか」
「ちゃん付けはやめろ」
「希ちゃんが男言葉をやめるならやめてやるよ」
「……ちゃん付けはやめて」
「はは、ま、許そう。で、話しなよ」
「怜華」は怜悧になっても相変わらず偉そうだ。希の家の希の部屋で、ジュースの入ったグラス片手に、怜悧はベッドに腰掛けていた。希は制服姿のまま椅子に座っている。
「これが夢なら、所詮キミもわたしの夢の産物でしかないことになる」
「おれにとっては逆のことが言える状況だな。ま、だったら気楽なんだろうけどな」
「……夢じゃないなら、わたしたちは二重人格なのかもしれない」
「……へ〜、面白いこというんだな」
「潜在意識の顕在化というやつだね。でも、この場合は望の記憶の扱いが問題になる」
「怜華の方もだな」
「偽の記憶を自分で作ってる、という可能性も考えてたけど、二人同時にとなると状況が大きく違う。かなり確率は低いと思う。しかも、ぼくらの記憶は同じみたいだし」
「わたしたち、と言えよ、希ちゃん」
「…………」
このやろう、という目で希は怜悧を一睨みするが、些細なことなので逆らわない。
「望の誕生日に、怜華の部屋でアルバムを見たことは覚えてる?」
「ああ、しっかりとな。かなりこっぴどく怜華をふったやつがいるな」
「…………」
「怜華が自分から裸を見せた男は望だけだったのに。あの後どれだけ泣いたかわかる? ……なんだか思い出すと腹が立ってきた」
「その話は置くとして、やっぱり記憶はかぶってるみたいだね」
「置くなよ」
「怜悧の方はどう推測してたの?」
「だから置くなよ」
冷たくつっこんでおきながらも、怜悧は率直に自分の意見を述べた。
「パラレルワールドだな。別世界の人格と入れ替わった。それしかない」
「……短絡的だね、相変わらず」
これまでも、頭はいいくせに決め付けると譲らなかった「怜華」。しかも直感で正解にたどりつくことも多いから、非難できないことも悩ましい点だ。
「じゃあ他にどう説明ができる?」
「だからそれを考えてるんだよ。パラレルワールドといっても、入れ替わったのではなく乗っ取ったのかもしれないし、もしかしたらこれはぼくらが生きた時代よりずっと未来なのかもしれない。他にも、変わったのはぼくらではなく世界そのものというのもありうる。バーチャルリアリティシステムみたいなもので空想を共有しているのという可能性もある」
「可能性ならいくらでもあるだろ、それは。問題は一つだけだ」
「なに?」
「原因とか戻れる戻れないの問題も二次的なもので、最大の問題は戻りたいかどうか。戻ろうとするかどうか」
「……怜華にしては、的を射た意見だね」
「後で絶対殴る」
「お手柔らかに」
「自分が女だからっておれが手を出さないと思ってないか?」
「大丈夫、その時は本気で嫌う」
「…………」
「…………」
「なんだかんだで、おまえも順応してるじゃん」
「するしかないからね。……怜悧は戻りたくないの?」
「別に、夢だろうと未来だろうと仮想現実だろうとパラレルワールドだろうと、このままで何か不自由があるわけじゃない。おれの場合は男としての過去の記憶も完全にあるから、その気になればいくらでも怜悧として振る舞える。それは希も同じだと思うけど?」
「……まあね」
「こうなった原因も元に戻る手段もさっぱりわからない以上、どうこうできることは多くない。戻れるかどうかもわからないのにあがくのは時間の無駄かもしれない」
「なにもしなければ、それこそ一生戻れないかもしれないよ?」
「で、希はどう? 戻りたい?」
「……希はどうなってるんだろう?」
「え?」
「だから、本来のこの身体の持ち主である希」
「夢なら最初からそんな子いないし、身体を乗っ取ったのなら身体に同居してるか、混ざり合ったか、消滅したんじゃないかな。……となると、身体が入れ替わったのなら元の身体に逆にいるわけか。わたしの身体をあの優男が乗っ取った? うげ、きしょいかも」
「……もしそうなら、あっちもあっちで大変そうだな……」
「いじめという問題もないから平気だろ。希は怜悧に好意を抱いてたはずだし、二人とも状況に気付けばくっついてめでたしめでたし」
「……いやじゃないんだ?」
「うげ、とか言ったくせに」という目で、希は怜悧を見る。怜悧は「どーしようもないからな」とあっさりと言い放った。
「……キミは本当に戻りたいとは思ってないの?」
「ん〜」
なぜか、怜悧はじっと希を見た。
「……半年後が勝負かな?」
「半年?」
「うん、希がもっと健康的になってから決める。今はこっちもこっちで面白いから全然オーケー」
「……能天気すぎだろ、それは」
「希ちゃんも人のこと言えないだろ。すっかり希としての足場固めをしてるし」
「なにも好んで嫌な立場でいることはないからね」
「で、どうだ? 女の身体は? 堪能したか?」
「…………」
希はため息をついて立ち上がった。
「そろそろ話は済んだだろ。帰りなよ」
「やだね。まだ希ちゃんがどうするかを聞いてない」
「……わたしにとっては、戻りたいかどうかが二次的なものかな。戻れるという前提がなければ考えるだけ無駄だし。だから、とりあえずは、様子見」
机に身体を預けて、呟くように言う希。
「今は希として普通に生きてみるよ。何らかの拍子で元に戻るかもしれないし、原因や戻る方法も見つかるかもしれないから」
「見つけようという努力はしないわけだ?」
「……それをするのに、普通に生きるのが最短ルートと思ってる」
「どういうこと? 希はどう思ってるの?」
「……まず、原因は、自然現象か人為的なもののどちらかと推測できる」
「それ当たり前すぎ」
「自然現象でも人為的なものでも、他にも同じ状況の人間がいるかもしれない。こうやって目の前に実例がいる以上、他にいても不思議じゃない」
「はっはっは。今ごろ気付いたのか、遅いぞ、希ちゃん」
「…………」
「それで?」
「……後はもう自分で考えろ」
希はぷんとそっぽを向く。怜悧はケタケタと笑った。
「すねるなよ。続けろよ」
「……なんにせよ、同じ状況の人間を探すのが手始めになると思うんだ。ぼくは今までの希とはもう全然違うように動いてるから、キミが気付いたみたいに同じ状況の他の人間なら気付いて接触してくるかもしれない」
「希ちゃんの変化はかなり露骨だからな」
「……わたしのは必然でしかないよ。希と同じに振る舞うのは辛すぎたから」
「それでおれが気付けたんだから、結果オーライだな」
前向きな気持ちで言っているのか、なにも考えてないだけなのか。怜悧の物言いに、希は少しだけ笑った。
「じゃ、とりあえず、おれも好きに振る舞っていいわけだな。適当に気付かれるようにしつつ、普通に生活してオーケー、と」
その結論でいいのか? とつっこみたい希だが、他にいい意見もない。笑みが苦笑気味になる。
「無関係の人間に怪しまれなさすぎない程度にね。その性格で人前にでるとコワレタと思われるよ」
「はっはっは」
「威張ることじゃない」
「ま、他人の前では最初は猫を被るとするさ」
「あと、怜悧にはわたしよりできることがあるよ」
「お、なになに?」
「逆に、これまでの性格と露骨にかわってる人間に注意すること。わたしはこっちの人間をあまり知らないから。かわってても気付けない」
「めんどくさい」
きっぱりと言い切る怜悧。希は笑ってしまった。
「いいよ、別に。普通にしてて気付いた範囲で」
「ならよし。その先は、人を集めて、サンプルを集めて発生状況をつつき合わせて共通点を探すわけだよな」
なんだかんだで怜悧の飲み込みは早い。希は小さく頷く。
「気が遠くなるような作業になるかもしれないけどね。その上原因がわかっても、人為的にそれが起こせるかどうかも問題だし」
「雨を降らせるより難しそうだな。となると、元から人為的な方が楽か」
「個人的には、自然現象であってほしいな。意図的にやられたらたまったもんじゃない」
「それは、逆に二度と戻れないといってるようなものだな。人為的な方が戻れる可能性は高いんじゃないか? 偶然に頼るよりも」
「……痛い意見だね」
「でも、人為的だとどうなんだろうな。超能力者とか宇宙人とかマッドサイエンティストとか?」
「笑い飛ばしたいけど、それも否定できないね、この状況だと」
「でも、そういう連中が自分から接触してくるかな?」
「だれかが意図的にこの現象を引き起こしたのなら、そいつもわたしたちの状況を把握してるはず。何らかの接触がある可能性は低くないと思う」
「意図的じゃないなら? 無意識にやったことかもしれないぞ」
「お手上げだから考えない」
「いい性格だな」
「まーね」
「意図的だとしても、待つしかないのか?」
「こっちも一応注意するけど、捜査対象が広すぎるよ。わたしたちがランダムに選ばれてるならそれもお手上げだし、怪しいやつを注意するくらいのことしかできないと思う」
「……めんどくさいけど、とりあえず国際機関と大手企業と、身近な連中については調べとくよ」
「うん、任せた」
「おまえに変な虫がいたら許せないからな」
「……ふぅ。こっちでもそういうこと言うのか」
「おまえ、おれの他に恋人なんか作るとそいつは社会的に抹殺するから」
「……またいきなり」
しかも「おれの他にというのはなんだ」と思う。
「言っただろ? おれは望でも希でも全然かまわない。おまえが欲しいんだって」
怜悧も立ち上がった。希は一瞬ビクンとなりつつ、ドアの方にゆっくりと移動する。
「どこにいくつもりだ?」
「……お風呂とご飯の用意に。怜悧は帰って。もう遅くなるよ」
「おれ、本音が知りたいんだけど?」
「……なんのこと?」
「望は怜華のこと、本当はどう思ってたの?」
一歩、怜悧は近づいてくる。真剣な眼差し。希は嘘はつかなかった。
「……嫌ってはいなかった。女としての魅力も感じてた。でも、やっぱりあの性急な性格は好きにはなれなかった」
「じゃあ、今の希は今のおれをどう思ってるんだ?」
「……嫌ってはいない。男としてはいい男の範疇かなとは思う。でも、やっぱりキミは怜華だし、その性格は恋愛感情では好きになれない。何より今のわたしに男を好きになる意志もない」
「……そんなのが通用するとは思ってないよな?」
希は強引に、両腕を引っ張られた。強すぎる力。手首が握りつぶされそうだ。
「な」
充分警戒していたはずなのに、やはりどこかで油断があったのかもしれない。対応できない怜悧の早さだった。希が反撃しようとする前に、怜悧は希の両手を片手でまとめてつかんで、希を前に引きずり倒す。膝を床にぶつけた希は悲鳴をあげかけた。
「お、おい!?」
「暴れるなよ」
「ま、待て待て。何の冗談?」
両手を高く上げさせられて床に膝をついた姿勢で、希は真剣に焦って怜悧を見上げた。男女差のハンデが重い。
「冗談だと思うか?」
「ほ、本気で嫌いになるよ」
「今だってどうせ好きじゃないんだろ」
「い、いつか好きになるかもしれない?」
「なんで疑問形なんだ? それにもう今なら望を自分のものにできる」
怜悧の片手が、希の頬を這う。
「ま、待って、お願い」
希は立ち上がろうとしたが、即座に足を払われた。
「った、な、なんて真似を」
痛すぎて涙目になる。
「それに所詮この身体は借り物だしな。どう扱ってもいいだろ」
「い、一生このままかもしれないって言ったのはだれだ!」
「ま、それはそれだ」
「ぼ、ぼくの身体は貧弱だよ。顔だって身体だって痩せてるし、魅力なんてないだろ!?」
「そんなの時間の問題だよ。それに、おれが欲しいのは身体じゃなくてその中身だから」
「こ、こんな手段で中身が手に入るわけないじゃないか!」
「これで一生望はおれのこと忘れないだろう? それに、もう二度と手放すつもりもないし」
「おいおい……」
この期に及んで、希はこの状況を冗談にしてしまいたかった。が、怜悧はそれをさせてくれなかった。
強引に、唇を唇でふさがれた。
「ん!?」
最初は、そっと触れるだけのキス。すぐにそのまま、情熱的な熱いキス。
踊りこんできた怜悧の舌を、希はめいっぱいかんだ。
「っでぇ!?」
「キミはなんてことするんだ!」
「い、痛いな、それはこっちの台詞! って、待て!」
思わず希の手を離して口を押さえていた怜悧は、即座に立ち上がっている希を見て表情を変えた。
「だれが待つか!」
待てと言われて待つ状況ではない。腕が自由になった希は、本気モードで怜悧に飛びかかった。まず胸に肘打ち、次いで腕を取って床に叩きつけて、最後に両膝で背中に全体重をかけてのしかかる。
「ぐえ」
容赦のない三連打に、怜悧の意識は一瞬にして落ちた。
「しまった。やりすぎた」
時すでに遅し。だが即座に希は結論を出した。
「ま、いっか」
自業自得というやつだ。しかし、このまま放置しておきたいところだが、いい加減に帰って欲しい。希はクローゼットからリボンを取り出すと、怜悧の手首を二重三重にぐるぐる巻きにして手の自由を封じた。そうしておいてから、背中から活を入れる。
「ていっ」
怜悧はばっと跳ね起きた。
「いったぁい!」
「おはよう、怜悧」
「の、望、あなたやりすぎ! 女の子の身体を何だと思ってるの!?」
「……その言葉はそっくりそのまま返すよ。レイプ魔さん」
「レ、レイプって、あんなの全然同意じゃない!」
「どこがだ!」
容赦なく、起き上がった怜悧にパンチを食らわす希。「ぐふ」という声とともに、怜悧はふらふらとベッドに座り込んだ。
希は自分の拳の方も痛くてちょっとまた涙目になった。
と思ったら、怜悧の瞳にも涙が浮かんだ。
「ひっく」
「う」
「ふぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!」
「…………」
お世辞にも可愛いとは言えない泣き声が響き渡る。
「望の馬鹿ぁ! いじわる〜! どーしてわかってくれないのよぉ!」
「あ、あの、怜悧くん?」
「わたしはただ望が好きで好きで好きなだけなのに、いっつもいっつもわたしに冷たくして、そんなのひどすぎるよぉ!」
こうなってしまうともうお手上げだった。希は気がすむまで泣かせようと思って、もう放置して一度部屋を出ようとした。可愛い怜華の声で泣かれてもうんざりなのに、怜悧の声で泣かれたらさらにうるさいだけだ。
「どこにいくのよぉ! 聞きなさいよすわりなさいこっちきなさいわたしにちゅーしなさいだきしめなさい!」
少しだけ、笑ってしまう。男の声で言われてもちょっと気持ち悪いのだが、やはり怜悧は怜華だった。
「ねえ、怜悧」
「なによぉ! わたしの気持ち知ってるくせにどうしてそんなに冷たくできるの! わたしには望しかいないのに望しかいらないのに望が全部欲しいのに!」
「……オーケー、そこまで言うなら付き合ってもいいよ」
「…………! ほんと?」
怜悧の泣き声が一瞬で途絶えた。現金すぎる怜悧の反応だが、今の希は笑うことをしない。
「ただし条件がある」
希の真摯な瞳に、思わず息をのむ怜悧。
「当分キミからは話しかけてくるな。一日に一回はぼくの方から話しかける。そうだね、一年間、キミがそれで我慢できるなら、ぼくはキミのものになってもいい」
「そ、そんなの、いや」
「イヤもなにも、キミは条件をつける立場じゃないよ。これが最後通牒だから。守れないようなら、本気でキミを切り捨てる」
「ひ、ひどすぎる、勝手よ」
「そうだよ。キミがぼくにしてきたこともしたことも充分勝手だからね。嫌だというなら、今すぐぼくらの関係は終わりだ」
嘘偽り、冗談なんて混じっていない希の瞳。怜悧はさらに泣き顔をくしゃくしゃにした。
「……わたしにできると思う?」
「さあね。さっさと泣きやみなよ。男の泣き声は可愛くない」
「……ぐす」
「今のキミは男っぽい方が似合うよ」
「あなただって女の方が似合うくせに」
「ま、今は女だからね。ほら、顔を拭きなよ」
制服のポケットからハンカチを取り出して、怜悧の顔に押し付ける。怜悧は涙を拭いた後、ちーんと、鼻をかんだ。
「ティッシュがいくらでもあるんだからそっちにして欲しかった……」
「……ティッシュもちょうだい」
「はいはい」
箱ごととって、希は怜悧に渡す。怜悧はもう一度鼻をかんだ。
笑いながら、希は怜悧の横に座る。
「ほら、舌はどうなった?」
「まだ痛いよ。今日はご飯を食べられない。あれはひどすぎだと思う」
「強引に襲ってくるようなやつに優しくできるほど大人じゃないよ、今も昔も」
「……ふんだ。そうだ、一年って、きっかり一年? 半年にしない?」
「論外。そうだね、十七の誕生日までにしとくよ。その日の二十四時まで」
「そこまで我慢すればやりたい放題?」
「一回死んでこい。普通に付き合ってやるだけだよ」
「当然、カレカノってことだよな?」
「ま、まあね」
「一日一回って、当然毎日だよな」
「あ、いや、毎日はきついかな」
「何寝ぼけてるんだ。条件をつけてきたのはそっちだからな。ちゃんと守れよ」
「えーっと」
「やぶったらその時点で希はおれのものだからな」
「…………」
しまった、と、希の顔に書いてある。普段無表情が上手い希のそんな表情に、怜悧はからからと笑った。
「明日は放課後に来いよ。でもって明後日はデートだ」
「……もしかして、自分の首をしめた?」
休日がつぶされたようなものかもしれない。
「はっはっは。よく考えたらそんなに悪い条件じゃないな。平日は、休み時間は短いから、昼休みか放課後がいいな」
「…………」
「お弁当も作れるだろう? たまに作ってこいよ」
「どーしてそこまでしないといけない?」
「彼女の手作り弁当が食べたいから」
「だれが彼女だよ。だいたい怜華だって一度もそんなの持ってきたことないくせに」
「え、作ってきて欲しかった? それに彼女って認めてくれてたの?」
「そうだね、そんな普通の可愛い女ならぼくも怜華にほれてたかもね」
「それは絶対嘘だ。望が普通の女で満足できるわけない」
「…………」
希は頭痛を覚えた。
「まあいい。今日はもう帰りなよ」
「せっかくだからご飯をご馳走しろよ」
「ずうずうしすぎ」
「いいだろ、そのくらい。どうせ一人で食べるんだろ? 手料理を食わせろ」
「……怜悧って品がないね」
「おじいさまの影響だな。怜悧は矯正させられたけど、怜華の時もたまにでてたし。今はコレが好きだ」
「やれやれ」
希は肩をすくめて立ち上がった。
「ま、いっか。じゃ、食べていきなよ」
「やったねっ。いい加減この手はずしてくれ」
「帰るまでそのままに決まってるだろ」
「えー! 横暴ー!」
「また襲われたくないからね」
「もうしないよ。誓う」
「信用できない」
二度と部屋にも上げるまいとも思っている希であった。
index
初稿 2003/11/22
更新 2008/03/10