She is a boy.
Taika Yamani.
没原稿その2 「紅林花里奈との出会いのヒトコマ」
神社の境内から少し離れたその場所で、どこかから走ってきたその少女は、いきなり、ぼくの目の前でコケタ。
「……うわ〜……」
つまずくというよりは足を滑らせたようで、ダイナミックに右足が前方に流れ、左足も膝を思い切り地面にぶつけ、衝撃が強すぎたのかそのままお尻が地面に衝突、両手も身体を支えようとしたのか派手に地に押し付けていた。
見ているだけで痛くなりそうなコケカタだった。
彼女はしゃがみこんだまま、すぐに片手で膝を押さえたが、他にも痛いところがあるようで、なんだか息も絶え絶えといった風情。
「大丈夫?」
思わずぼくは少し駆け寄って、彼女の背になでるように手を当てた。彼女はぼくに気付いていなかったようで、少しびっくりしたように涙目をぼくに向けてきたが、同い年くらいの同性と知って安心したのか、すぐに痛みがぶりかえしたらしい。ぽろぽろと涙をこぼす。
ぼくは可笑しいような、慌てるような気持ちになりながら、彼女が泣き止むまで、その背と、一番痛むらしい膝を撫で続けた。
それが、紅林花里奈との出会い。
結局、すぐには立てないくらい膝を打っていた花里奈に肩を貸して、ぼくは花里奈を彼女の家につれていった。彼女はその神社の神主一家の娘だったのだ。家のごたごたで親と衝突して衝動的に飛び出してきていた彼女は、家に戻るのを嫌がったけど、怪我をしていたからぼくは少し強引に彼女を送っていった。でも、こともあろうに、彼女の両親は怪我をして帰って来た娘に、いきなりきつくあたろうとする。ぼくはむっとして冷然と対応したら、結果的に花里奈をかばうような立場になってしまい、彼女の家のごたごたに巻き込まれてしまった。
まあ、そんなすったもんだの末に、彼女との友情が芽生えていたのでした。でも、同じクラスになったのは本当に偶然で、入学式の日に教室で彼女を見かけたときはさすがにびっくりした。彼女はすごく喜んでいたし、ぼくも彼女のことも気に入っていたから素直に喜んだものだ。
いまだに、花里奈はこの時のことを思い出すと、恥ずかしくなるらしい。リンに話して聞かせた時、リンは笑いっぱなしで、花里奈はずっと真っ赤だった。
ま、そんな二人も可愛いから、ぼくとしてはノープロブレムだけどねっ。
ちゃんちゃん。
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初稿 2005/03/04
更新 2014/09/15